フォルクスワーゲン(VW)は電気自動車(EV)のロードマップに関して戦略的な方針転換を発表した。次世代のSSP(スケーラブル・システム・プラットフォーム)の導入を遅らせる一方で、既存のMEBプラットフォームを改良したMEB+を基盤とする製品投入を前倒し、市場投入の迅速化とコスト競争力の確保を両立させる姿勢を明確にした。VWブランドのトーマス・シェーファーCEOは、自動車業界が直面する複雑な課題と厳しいビジネス環境下で変革を推進する重要性を強調している。
当面の焦点は、2026年の欧州市場投入を目指すエントリーレベルのコンパクトEV、「VW ID.ポロ」である。このID.2allの量産モデルとされるID.ポロは、当初価格が約2万5000ユーロからとなる見込みであり、フォルクスワーゲンはこれを「国民車」の再定義と位置づけている。初期の納車分にはNMCバッテリーが搭載されるが、より手頃なLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリー搭載モデルは、発売から6ヶ月から9ヶ月後の2026年晩夏から秋にかけて市場に投入される予定だ。また、ID.ポロには高性能版のID.ポロGTIも設定され、最高出力226psのモーターを搭載し、価格は約600万円前後と予想されている。
既存のID.モデル群、具体的にはVW ID.3およびID.4は、2026年末までに包括的なアップデートを受け、コスト削減に寄与するMEB+プラットフォームへ移行する。特にID.3のフェイスリフトは2026年春に予定されており、ID.2allコンセプトで示された新しい「ピュア・ポジティブ」デザイン言語が採用される見込みだ。カイ・グリューニッツ技術開発責任者は、ユーザーの利便性向上のため、物議を醸したタッチスライダーに代わり物理的なボタンが復活導入されることを確認しており、これらの最適化が「予想以上に大きい」と述べている。
一方、次世代のEV専用アーキテクチャであるSSPプラットフォームは、当初の計画から遅延し、最初のモデル投入は2028年になる見通しだ。SSPは、既存のMEBやPPEプラットフォームを統合し、グループ全体の電動化戦略の中核を担う戦略的プロジェクトであり、800V高電圧システムやユニットセル型バッテリー技術を特徴とする。グループCEOのオリバー・ブルーメ氏は、SSPがグループ傘下のあらゆるブランドを横断的に支え、プラットフォームの複雑性を低減し、部品共通化により最大20%のコスト削減を見込んでいると強調している。このSSPを基盤とする最初のモデルは、電気自動車版ゴルフの後継、あるいはT-ロックの後継SUVになる可能性が高いと目されている。
フォルクスワーゲンは、2026年以降に世界で発売するすべての新型車を完全なEVとすることを目指し、2030年までに世界的な量産メーカーの筆頭となるという目標を掲げている。この目標達成に向け、SSPの導入遅延は一時的な調整と捉えられ、MEB+による製品強化と並行して、グループはソフトウェア子会社カリアド(Cariad)との連携を強化し、SSPの確実な開発を進める構えである。VWグループは、電動化への投資を継続しつつ、競争力を維持するための現実的な製品展開を優先している状況がうかがえる。


