スペインは現在、全国的な熱波に見舞われており、多くの地域で気温が35℃を超え、南部や北東部、カナリア諸島では40℃に達すると予想されています。スペイン気象庁(AEMET)は、アラゴン州とバスク州に極端な危険を示す赤色警報を発令しました。この異常な暑さは、特に糖尿病、呼吸器系、心血管系の疾患を持つ人々にとって深刻な健康リスクをもたらし、急性腎不全、神経系の障害、筋肉の合併症を引き起こす可能性があります。都市部では、「都市ヒートアイランド」現象により、これらの影響がさらに悪化しています。
2025年5月中旬から7月中旬にかけて、熱波に関連する死亡者数は1,180人に達し、これは2024年の同時期と比較して1,000%以上の増加となります。スペイン国立統計局(ISCIII)のデータによると、2025年7月の熱波関連死者数は前年同月比で57%増加し、1,060人に達しました。これは過去10年間で4番目に多い数字です。特に、65歳以上の高齢者が被害者の95%を占め、そのうち59%が女性でした。これは、スペインの人口構成における高齢女性の割合の高さと、熱に対する生理学的な脆弱性の高さが原因と考えられます。例年穏やかな夏を過ごしてきた北部地域が最も影響を受けており、これらの地域は熱波に対するインフラや社会的な備えが十分でない可能性が指摘されています。
国民の90%以上が極端な暑さを深刻な健康リスクと認識していることが、スペイン保健省が実施した調査で明らかになりました。しかし、自身が脆弱であると感じている人はわずか30%にとどまっています。気候変動が熱波の主な原因であると考える人は87%に上ります。この状況は、気候変動がもたらす極端な気象現象の頻度と強度が増加していることを浮き彫りにしています。都市ヒートアイランド現象は、都市部の気温を上昇させ、特に脆弱な人々への影響を増幅させる要因となっています。バルセロナでの研究によると、都市ヒートアイランドは夏の死亡率を4%増加させることが示されています。都市の緑地率を30%増加させることで、ヨーロッパ全体で2,664人の早期死亡を防ぐことができると推定されています。
スペインは、気候変動への適応策として、水資源の革新的な利用による都市の冷却化を進めており、セビリア市はその先進的な取り組みで注目されています。街路の日よけや、アスファルト表面の削減、光を通しやすく浸透性のある都市表面の使用などが、都市ヒートアイランド効果を抑制するための戦略として実施されています。これらの対策は、将来的にさらに厳しくなるであろう熱波への対応として、持続可能な都市環境の構築を目指すものです。