2025年5月から6月にかけて、イスラエル軍によるガザ地区への軍事作戦が激化し、多数のパレスチナ人の死傷者と広範な破壊を引き起こしました。この状況は、地区における人道危機の深刻な悪化を招き、国際社会からの支援の必要性を浮き彫りにしています。5月には、イスラエル軍による攻撃で100人以上のパレスチナ人が死亡し、複数の住宅地が破壊されました。特にガザ市アル・ダラジ地区への攻撃では、少なくとも8人が死亡し、多数が負傷しました。6月に入ると、イスラエル軍は作戦をさらに強化し、ガザ市西部にある住宅地への「半四半期」にわたる攻撃で、3人が死亡、2人が負傷しました。これらの攻撃により、住民の避難とインフラの破壊が深刻化しています。
7月22日、米国は、イスラエルが「ガザのための人道」作戦開始以来、1,000人以上のパレスチナ人を殺害したと発表しました。イスラエル国防省は、この作戦により1,000人以上のパレスチナ人が死亡したと報告しており、そのうち4分の3は支援物資の配布場所の近くで死亡したとされています。国連によると、2025年5月27日から7月31日までの間に、食料を求めていた少なくとも1,373人のパレスチナ人が死亡し、その大部分はイスラエル軍によって殺害されました。特に、米国とイスラエルが支援するガザ人道財団（GHF）の拠点付近で多くの死傷者が出ています。GHFの拠点では、5月27日から7月31日の間に少なくとも859人のパレスチナ人が死亡したとされており、その多くがイスラエル軍によって殺害されたとされています。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イスラエル軍が飢餓状態にあるパレスチナ市民に対して日常的に発砲しており、これは国際法および戦争犯罪の重大な違反にあたると指摘しています。
人道支援の状況も深刻です。2025年5月25日から6月7日の間に、109の仮設住居施設と115の公立学校が避難命令を受け、支援活動の一時停止を余儀なくされました。食料安全保障の状況も悪化しており、5月には5歳未満の子供の急性栄養失調の割合が前月比で増加しています。国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）の栄養スクリーニングによると、ガザ地区の5歳未満の子供の急性栄養失調率は3月から6月にかけて倍増しました。これは、2月3日から5月18日までの11週間にわたるイスラエルによる完全な封鎖の影響によるものです。
ジョン・カービー米国国家安全保障会議報道官は、ガザへの人道支援の進捗を評価しつつも、その持続性を強調しています。しかし、イスラエル軍による支援物資の配布場所付近での発砲や、支援物資を運ぶトラックの襲撃・略奪が報告されており、支援物資の安全かつ確実な配布が依然として大きな課題となっています。2025年6月には、国連が収集した支援物資トラックの90.7％が、目的地に到達する前に傍受されたと報告されています。7月にはこの割合が94％に上昇しました。これらの状況は、ガザ地区における人道危機の深刻さと、その解決に向けた国際社会の継続的な努力の必要性を示しています。