カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者たちは、系外惑星の内部でダークマターが蓄積し、ブラックホールが形成される可能性を示唆する新たな研究結果を発表しました。この研究は、宇宙の謎に包まれたダークマターの性質を解明する上で、重要な手がかりとなる可能性があります。
研究によると、超重ダークマター粒子が系外惑星に捕捉され、惑星内部での相互作用を通じてエネルギーを失い、中心部に蓄積するというシナリオが提唱されています。この蓄積が臨界質量を超えると、ダークマターの塊は重力崩壊を起こし、ブラックホールを形成すると考えられています。形成されたブラックホールの質量によっては、惑星を内部から取り込むか、ホーキング放射によって蒸発するかのいずれかの運命をたどるとされています。このプロセスは、観測可能な時間スケールで起こりうる可能性があり、一つの系外惑星の寿命中に複数のブラックホールが形成されることも考えられます。
この研究は、2025年8月20日に『Physical Review D』誌に発表されました。研究を主導したMehrdad Phoroutan-Mehr氏は、ダークマターの性質、特にその質量が、惑星がブラックホールを形成する可能性や、その後のブラックホールの運命に大きく影響すると指摘しています。例えば、ダークマター粒子の質量が軽いほど、また惑星が重いほど、ダークマターの捕捉とブラックホール形成の可能性は高まります。
この理論は、ダークマターの性質を理解するための革新的なアプローチを提供します。これまでダークマターの研究は、主に地上での実験や、銀河中心部のような高密度領域での観測に焦点を当ててきました。しかし、この研究は、系外惑星、特に銀河中心部のようにダークマターが豊富に存在する領域に存在する巨大ガス惑星が、ダークマターの性質を探るための「自然の実験室」となりうることを示唆しています。NASAの系外惑星アーカイブによると、2025年半ば時点で約6,000の系外惑星が確認されており、これらの惑星の観測データが増えることで、この理論の検証が進む可能性があります。
さらに、この研究は、これまで考えられてきた恒星の進化や宇宙初期の出来事によって形成されるブラックホールとは異なる、惑星サイズのブラックホールの存在を示唆するものです。もし惑星サイズのブラックホールが発見されれば、天体物理学の理解を大きく変えることになります。今後の研究では、ダークマター密度が高い領域にある系外惑星の観測を強化し、理論モデルを洗練させることで、この現象の観測的証拠を探求することが期待されています。また、ダークマター粒子が惑星を加熱する可能性も指摘されており、将来の赤外線望遠鏡は、このような間接的な兆候を捉えることができるかもしれません。