トルコのサムスン県ヴェジールキョプリュに位置するオユマアチ・ホユック遺跡で、ヒッタイトの聖なる都市ネリクの発掘調査が20年目を迎えました。これを記念し、2025年8月18日から19日にかけて「ヴェジールキョプリュ考古学・文化遺産ワークショップ」が開催され、ネリクの正確な位置特定や26点の楔形文字板断片の発見など、数々の重要な成果が共有されました。
発掘責任者のライナー・ツィホン教授は、ネリクが聖都としての位置づけを再確認するとともに、発見された楔形文字板断片が天空神への言及を含んでおり、遺跡の同定を決定的に裏付けるものであると強調しました。ヒッタイト時代、ネリクの天候神は雨と豊穣をもたらす神として崇拝され、聖都は王たちが祭儀のために訪れる信仰の中心でした。この発見は、ネリクが単なる都市ではなく、ヒッタイトの精神世界における極めて重要な宗教的ハブであったことを示しています。
9年間の発掘を経て特定された聖なる泉からは、特に注目すべき木造遺物が多数発見されました。この泉のプールからは、農具の鋤(世界でも数例しか確認されていない希少な遺物)、織機材、馬具の軛の一部、投石器の石などが回収されました。アナトリア地方では水没した木材が良好な状態で保存されることは稀であり、これらの遺物は当時の技術や儀式における水の役割、そして生活様式を理解する上で貴重な手がかりとなります。これらの木造遺物は、放射性炭素年代測定により、鉄器時代にまで遡る可能性が示唆されています。
さらに、3000年前のヘーゼルナッツの殻も発見されました。このヘーゼルナッツはヒッタイト時代のものであることが確認され、黒海地域が古くからヘーゼルナッツの重要な生産地であったことを強く示しています。これは、この地域が古代の交易網や食文化において重要な役割を担っていた証拠であり、ヘーゼルナッツ栽培の歴史をさらに深く理解させるものです。
ワークショップには、サムスン副知事ハンチェル・バシュテュルク氏、オンドクズ・マイズ大学副学長アーセ・ピナール・スメル教授、サムスン文化観光局長スュレイマン・デミルタシュ氏をはじめ、多くの関係者が集まりました。サムスン知事オルハン・タヴル氏は、発掘調査への継続的な支援を約束し、2025年に支援予定のプロジェクトが評価中であることを伝えました。
これらの重要な発見と関係機関からの継続的な支援により、オユマアチ・ホユックでの発掘調査は今後も進められ、この地域の豊かな歴史と文化遺産がさらに明らかにされていくことが期待されています。