16世紀イタリアの芸術家、アントニオ・ソラリオによる「聖母子」と題された絵画が、1973年の盗難から52年を経て、イタリアのベッルーノ市立美術館に返還されました。この絵画は、イギリスのノーフォークに住むバーバラ・デ・ドツァ氏が所有していましたが、インターポールの盗難美術品データベースに登録されているにもかかわらず、返還を拒否していました。
デ・ドツァ氏は、法的根拠と個人的な愛着を理由に絵画の返還を拒否していましたが、アート・リカバリー・インターナショナルの創設者であるクリストファー・マリネロ氏の説得により、最終的に絵画をイタリアに無条件で引き渡すことを決定しました。マリネロ氏は、絵画が盗難美術品データベースに登録されているため、販売や展示が困難になることを指摘し、返還を強く訴えていました。
この「聖母子」は、1973年8月24日から25日にかけてベッルーノ市立美術館から盗まれました。多くの盗難品はその後オーストリアで回収されましたが、このソラリオの絵画は、バロン・デ・ドツァ氏が購入し、後に元妻であるデ・ドツァ氏の手に渡りました。2017年にデ・ドツァ氏が絵画をオークションに出品しようとした際に所在が判明しましたが、パンデミックによる遅延もあり、イタリア当局は所有権の主張に対抗するための十分な書類を提供できませんでした。
この絵画の返還には、アート・リカバリー・インターナショナルがプロボノ（無償）で交渉にあたり、保険会社Arte Generaliが物流費用を負担しました。この一件は、文化遺産の保護における国際協力の重要性と、所有権を巡る複雑な法的・倫理的課題を浮き彫りにしています。ソラリオの作品は、その芸術的価値だけでなく、文化遺産としての重要性から、多くの人々にとって特別な意味を持っています。